エッセイ

関 純子

「心身相関と演奏について」

私はロト先生とのレッスンを通じ、身体の繊細な使い方、美しい音の奏で方、音楽における歴史的背景とともに音楽の本質的な側面を学んでいます。その中でも、この身体の繊細な使い方は初めの頃からロト先生のレッスンの中で中核になっていました。

ロト先生に出会う前の、桐朋学園の学生時代に、このサイトのメンバーでもある長谷川智先生の東洋体育の授業の中で、全身を使って動くことを学びました。これは私にとって非常に衝撃的な出来事でした。疲れない体の使い方、繊細に身体を観察して動いていくことなど、今までにない教えを受けました。

しかし当時の私は、その東洋体育の身体技法と実際の演奏と、どうしても結びつけることができず日々悩んでおりました。その後ロト先生に師事することになったのですが、ここで初めて東洋体育で習った身体の使い方とピアノの演奏が結びつきました。ロト先生の奏法も身体全身を使う奏法だったのです。それはロト先生の師でありジュリアード音楽院の名教師であるゴロニツキ先生からの教えだと伺ったのは、ずいぶん後になってからでした。

そして、不思議と身体を楽に使って弾くことで心も解放され、音楽のイマジネーションも湧いてきます。この解放されることを知ると、目線の使い方まで変化していきます。遠くを見ると、広く遠く見えるようになり、譜面の見え方まで変わってくるのです。また、心の奥底まで気が付くことができ、それを表現していく手がかりにもなります。

ピアノは難しく、どうしても力みがちになってしまいますが、実際に私の生徒さんでも、この身体を楽に使うことを入り口に、心も解放され、自然に歌うように演奏できるようになった方がいらっしゃいます。

ロト先生ほど、心身相関と演奏との関係性に造詣が深い演奏家、教育者を私は他に知りません。