エッセイ

福田大和子

「音楽と生きるということ」

数年前、光栄にもロト先生の教えを賜る機会を得て初めてレッスンを受けさせていただいて以来、それまで感じることの出来なかった音の世界、音楽と自分との新たなる繋がりの発見の連続です。ロト先生の奏でられる音は決して一方的でなく、その場のすべてを包み込み、深い安らぎを与えます。鍵盤を叩き音を出す「打鍵」、これに表現される「打つ」とか「叩く」といった日本語の印象とは掛け離れた音の世界が広がるのです。最初に先生の音に触れた時、人間の身体とピアノという楽器がこんなにも互いに自然体で通い合い、意思疎通出来るんだというまさに未知との遭遇を実体験しました。

そんな感動に浸りながら自らの乏しい音楽人生を直視し下を向いていたある日、ロト先生より問われた「なぜピアノを弾いているのか」という言葉。不意に雷に打たれたような衝撃と共に、目の前の景色が一瞬消えてなくなったことを覚えています。ところが時が経つにつれ、その問いは今までの自分にとらわれることなく新しいことを知り、自分を深め豊かな人生を歩んで行きなさいという先生からのメッセージなのかも知れないと感じるようになりました。問への答えは未だ見つけられていません。この先、明確な答えを見つけられる日が来るかもわかりません。しかし様々に模索し、その過程を愛し、楽しみ、ゆっくりでも前に進んで行くことが大切だと考えます。今、ピアノを弾いていることが本当に幸せです。

長くなりましたが、この記念すべき歴史的ホームページの開設にあたり、不真面目で経験も浅く、ロト先生の門下生とはとても名乗らせていただくことの出来ない私に、大変個人的で拙い文章を記させていただけるという貴重な機会を与えて下さったロト先生はじめ、関係者の皆様へ心より感謝申し上げます。