エッセイ

沼田 園子

魔法の指を持つピアニスト 、Albertと紡いだ30年


私がAlbert Lotto氏と出会ったのは、30年以上前、まだ私が東京藝大の大学院の学生の頃でした。澤 和樹先生(現東京藝大学長)の主催、朝倉泰子さんのプロデュースされていた、奈良県下北山村での中学生から大学生までのミュージック・キャンプで助手をしていた時のこと。すべての曲に命を吹き込む魔法の指を持った世界的ピアニストの音楽に、私はすっかり魂を奪われました。その後Lotto氏とステージを重ねるたびに、彼のビロードのようなSinging Toneにハッとさせられ、強靭な構築力につつまれ、友人として、師として素晴らしい時間を共に紡いできました。

 

彼はピアノに触れている時こそが命の輝いている時。長年のお付き合いで、渡した楽譜を紛失してしまったり、天才肌のゆえ日常生活は難あり!の時もありますが、彼のピアノの音に触れた人は、いつの間にかそのミューズの女神の世界へ連れてゆかれてしまいます。

 何十年ものLotto氏のピアノの世界、そして彼を取りまく愛の輪が、素晴らしいサイトとして編集され、世界中の人々に聞いていただけることを心より嬉しく思っています。ますます円熟のAlbertの音楽に触れたく、これからも最大の関心を持ってゆきたいと思います。

                        親愛なるAlbertへ   

                            ヴァイオリニスト 沼田園子